多様な観点からの日本映画

 

 このたび、日本映画をテーマに、脱中心的でヴァーチャルなグローバル・ライブ・シンポジウムを開催することになりました。昨年刊行された二冊の共編著書——The Japanese Cinema Book (BFI)とRoutledge Handbook of Japanese Cinema (Routledge)——の執筆者を中心に27名の研究者が世界各地から集結し、6つのテーマごとにセッションに分かれてワークショップを行います。発表者諸氏による多様な観点からの批判的かつ建設的な問題提起を基にして、日本映画研究というダイナミックな分野をさらに発展させるべく、フロアーを交えた参加者全員で議論を行うことが、本イベントの最大の目的です。


 今回の発表・議論はすべて、この分野の核心とも言えるトランスローカル性を重視して、同時通訳を利用し英語と日本語で行います。スケジュール自体、時差を超えて世界各地からアクセスできるようにしている点で実験的です。地域ごとに異なる時間に参加することになるとはいえ、6つのセクションはすべて3月5日から7日の間に「ライブ」で行われます。また、ワークショップと双璧をなす企画として、3月1日から13日にわって配信される、大学院生たちのキューレーションによる映像作品シリーズもあります。


 昨年春に刊行されたThe Japanese Cinema Bookでは、有名な監督から、人気があったにも関わらずこれまで学術的には見過ごされてきたジャンル、さらにはエコロジー、観客、ホームムービー、植民地の歴史、ハリウッドやヨーロッパとの関係といったテーマに至るまで、さまざまなテーマに関して新しい観点を提示しました。夏に刊行されたRoutledge Handbook of Japanese Cinemaでは、プレ・シネマからポスト・シネマを包摂する長期持続的な動画映像史を検証しながら、作家性、ジャンル、産業といった予てから議論されている諸問題を、ジェンダー、アーカイブ研究、メディア理論、ネオリベラリズムといった広い概念枠と関連づけながら問い直しました。このシンポジウムでは、両書に寄稿した執筆者たちが、テーマごとに再編成された6つのセッションに分かれ、各自が担当した章を手短に紹介した上で、さらなる議論や探究を触発するような問題を提起します。各セッションの質疑応答では、それらの問題提起をもとにフロアーも含めて参加者全員で討論を行います。いくつかのセッションでは、博士候補の大学院生が発表者として加わり、両書とは異なるフレッシュな立場からそれぞれの研究成果を披露します。


 映画は全体として、映画館(さらには、シネクラブ、キャンパス上映、家庭内鑑賞)のような特定の場に規定される経験から、デジタル・プラットフォームのような、特定の場に規定されない映画経験へと拡張してきました。それにつれ、日本映画研究の論点は、映画を正統な枠組みに位置付けることよりもむしろ、拡張しつつあるメディア環境の一部として更新され続ける多様な要素の布置の中にそれを新たに見出すことに向かっているように思えます。さらにコロナ禍によって私たちは、映像メディアはいかに危機に対処したり、世界の見方を変えたり、グローバルな編成の変容に立ち向かったりすることができるのかといった問題に向き合わざるを得なくなっています(Keidl and Melarned 2020; Parks and Walker 2020; Zimmermann 2020)。誰もが世界の絶え間ない再編成を目撃すると同時に能動的に関わっていく状況…。こうした状況の中で開催される本シンポジウムが、日本映画や映像文化全般に関心のある方々にとって、さらなる斬新な思考とクリティカルなビジョンを発展させる機会となることを願ってやみません。


  • Keidl, P. and Melarned, L. 2020. "Pandemic Media Introduction." Pandemic Media. Lüneburg: Meson Press. Online at https://pandemicmedia.meson.press/chapters/pandemic-media-introduction/ (accessed Jan 7, 2021)
  • Parks, L. and Walker, J. 2020. "Disaster Media: Bending the Curve of Ecological Disruption and Moving Toward Social Justice." Media+Environment. 2(1). Online at https://mediaenviron.org/article/13474-disaster-media-bending-the-curve-of-ecological-disruption-and-moving-toward-social-justice (accessed Jan 7, 2021)
  • Zimmermann, Y. 2020. "Video Conferencing and the Uncanny Encounter with Oneself, Self-reflexivity as Self 2.0." Pandemic Media. Lüneburg: Meson Press. Online at https://pandemicmedia.meson.press/chapters/space-scale/video-conferencing-and-the-uncanny-encounter-with-oneself-self-reflexivity-as-self-monitoring-2-0/ (accessed Jan 7, 2021)

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